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二十四 無邪気 「良寛上人」

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法悦百景 深川倫雄和上

二十一 いのちの葉 「浅原 才市」
二十二 恋ごころ 「良寛上人」
二十三 世は夢 命は露 「良寛上人」
二十四 無邪気 「良寛上人」
二十五 大風のごとし 「物種 吉兵衛」
二十六 他力 「物種 吉兵衛」
二十七 許す母 「与謝野 礼巌」
二十八 修正会 「九条 武子」
二十九 親さま 「足利 源左」
三十 常不軽菩薩 「宮澤 賢治」
三十一 見聞知 「深川 倫雄」
三十二 仕えてぞ「行基 菩薩」
三十三 ひとの涙 「九条 武子」
三十四 くるしみの壺 「九条 武子」
三十五 この善太郎 「善太郎」
三十六 提婆尊者 「梁塵秘抄」
三十七 職業すなわち仏道 「兼好 法師」
三十八 寂しさの秋 「三木 清」
三十九 寂しき悔 「九条 武子」
四十 報恩講 「狐雲」
ウィキポータル 法悦百景

うたよまん 手まりや つかん 野にやでん
君がまにまに なして 遊ばん
           (貞心尼)

うたよまん 手まりや つかん 野にもでん
心ひとつを 定めかねつも
            (良寛)


面謁

 お師さまは、今日はお早うございました。お師さま、今日はずっとおいでて下さいまし。御持参の御書見もなさりたいでしょうけれど、今日はこの貞心につきあって下さい。

お師さまは無邪気なお方。そんなお年で、子らとかくれんぼうもなさる。でもお師さま、今日はお師さまのなさりたいように、貞心もついてまわりますから、御相手さして下されませ。うたのやりとりに、おあきなら、手まりはいかがでしょう。お散歩のお伴もいたします。野ぐさを摘んで、おつゆにしましょうか。

 貞心よ。待っていてくれたか。そうか。うたにしょうかな。どれ手まりじゃなよしよし。野に出たいか。ゆこう。じゃがな、貞心よ。わしはお前さまが慕うほど見事な仏者じゃない。心みにくい凡夫人じゃ。今日も今日とてな。

閃き

 貞心は、師にふれて過ごすのが、無上にたのしい。よき師よき仏者が、遊びの中でひらめかす仏道を、感じ取りたいのである。不用意な所作に閃く道が尊い。良寛は七十の今も求道(ぐどう)の外ない。良寛の遊びは、単なるたわむれではない。遊びも心定めんとする行である。

(昭和三十七年九月)