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二十五 大風のごとし 「物種 吉兵衛」

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法悦百景 深川倫雄和上

二十一 いのちの葉 「浅原 才市」
二十二 恋ごころ 「良寛上人」
二十三 世は夢 命は露 「良寛上人」
二十四 無邪気 「良寛上人」
二十五 大風のごとし 「物種 吉兵衛」
二十六 他力 「物種 吉兵衛」
二十七 許す母 「与謝野 礼巌」
二十八 修正会 「九条 武子」
二十九 親さま 「足利 源左」
三十 常不軽菩薩 「宮澤 賢治」
三十一 見聞知 「深川 倫雄」
三十二 仕えてぞ「行基 菩薩」
三十三 ひとの涙 「九条 武子」
三十四 くるしみの壺 「九条 武子」
三十五 この善太郎 「善太郎」
三十六 提婆尊者 「梁塵秘抄」
三十七 職業すなわち仏道 「兼好 法師」
三十八 寂しさの秋 「三木 清」
三十九 寂しき悔 「九条 武子」
四十 報恩講 「狐雲」
ウィキポータル 法悦百景

子供が木の枝をもって この間 大風が吹いて
コナイ コナイ センド ゆられて
ポキンと折れました というと
もう一ぺん いっておくれ と自分も合わせ
コナイ コナイゆられて ポキンと折れましたか
と 何べんもよろこんだ
              (物種 吉兵衛)

大風

 物種吉兵衛は堺の人。明治十三年、七十八才で亡くなった。イリコ行商人です。吉兵衛のよろこんだのは、大風の為に枝が折れたということでした。

かぜは世界中にいっぱいあります。仏さまも、せかいいっぱいです。風がはげしく吹きますと、風にきがつきます。風は仏さまに似ております。コノ如来ハ 十方微塵世界ニ ミチミチテマシマス とは、親鸞聖人のおことばです。

大けな風が吹きまして あみだの風がふきまして
わたしにあたった なむあみだぶつ

 これは浅原才市のうたです。吉兵衛にも、大風が吹いたらしいが、才市にも大風が吹いたらしい。御開山は、疾風の如し、大風の如しとおっしゃる。また

濁世の 起悪造罪は 暴風駛雨に ことならず

ともあります。

善巧(ぜんぎょう)

 大風とは、あらしである。信仰の道には、度々あらしが吹きます。折角のこれまでが、ゆられます。せんど、ゆられます。ボキリと折れて、吹きとびます。もろもろの自力の心、煩悩の心が吹きとばされます。それがいい。私に当る大風である。弥陀仏の仕組んだ善巧方便です。大風は一過します。

(昭和三十七年十月)