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三十七 職業すなわち仏道 「兼好 法師」

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法悦百景 深川倫雄和上

二十一 いのちの葉 「浅原 才市」
二十二 恋ごころ 「良寛上人」
二十三 世は夢 命は露 「良寛上人」
二十四 無邪気 「良寛上人」
二十五 大風のごとし 「物種 吉兵衛」
二十六 他力 「物種 吉兵衛」
二十七 許す母 「与謝野 礼巌」
二十八 修正会 「九条 武子」
二十九 親さま 「足利 源左」
三十 常不軽菩薩 「宮澤 賢治」
三十一 見聞知 「深川 倫雄」
三十二 仕えてぞ「行基 菩薩」
三十三 ひとの涙 「九条 武子」
三十四 くるしみの壺 「九条 武子」
三十五 この善太郎 「善太郎」
三十六 提婆尊者 「梁塵秘抄」
三十七 職業すなわち仏道 「兼好 法師」
三十八 寂しさの秋 「三木 清」
三十九 寂しき悔 「九条 武子」
四十 報恩講 「狐雲」
ウィキポータル 法悦百景

暗き人の 人をはかりて
その智を知れりと思はん
さらにあたるべからず
  おのれが境界に あらざるものをば
  争ふべからず 是非すべからず
            (兼好 法師)

愚者

 人にはそれぞれ職とする所がある。智慧のない人が、人をあれこれ評して、その知識の程度がわかったと思うのは、大体まちがっている。人のことを、あれこれ評するについて、自分の専門分野でないことに、発言するのはよくない。批判をして、優劣・善悪を判ずるべきではない。

 こう言うのは、兼好法師である。この人は、親鸞聖人の滅後二十年、一二八四年に生まれ、六十八才で亡くなった。朝廷に仕えたが、四十才に出家した。徒然草は、この人五十才頃の随筆である。この書は、神祇・釈教・恋無情・全き自由人の人生論である。この人の自由の本(もと)は、ひたぶるな世捨人の心である。世を捨ててこそ、曇りない機微の味がたのしめる。世の物識りの程、つまらぬ者はない。世の萬般(ばんぱん)に、知(ち)わたる事はよくない。

職業

 職業に優劣はない。職業とするか、渡世の業(ぎょう)とするかによって、人は定まる。わが職とすることにおいて、ひけを取る勿れ。プロに徹すべし。職分以外に、口はばったいことを言うな。どうしたら客がつくか、どうしたら見事なものが出来るか、徹底してゆけ。それが仏道である。

(昭和三十八年十月)