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二十六 他力 「物種 吉兵衛」

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法悦百景 深川倫雄和上

二十一 いのちの葉 「浅原 才市」
二十二 恋ごころ 「良寛上人」
二十三 世は夢 命は露 「良寛上人」
二十四 無邪気 「良寛上人」
二十五 大風のごとし 「物種 吉兵衛」
二十六 他力 「物種 吉兵衛」
二十七 許す母 「与謝野 礼巌」
二十八 修正会 「九条 武子」
二十九 親さま 「足利 源左」
三十 常不軽菩薩 「宮澤 賢治」
三十一 見聞知 「深川 倫雄」
三十二 仕えてぞ「行基 菩薩」
三十三 ひとの涙 「九条 武子」
三十四 くるしみの壺 「九条 武子」
三十五 この善太郎 「善太郎」
三十六 提婆尊者 「梁塵秘抄」
三十七 職業すなわち仏道 「兼好 法師」
三十八 寂しさの秋 「三木 清」
三十九 寂しき悔 「九条 武子」
四十 報恩講 「狐雲」
ウィキポータル 法悦百景

聞けばわかる 知れば知れる 聞こえたはこっち
知れたはこっち こちらに用がない
聞こえたこちらは おさらばと すてる方や
用というのは わりゃ わりゃ わりゃ
と向こうから 名のって下さる
           (物種 吉兵衛)

聞く

 吉兵衛は、大阪堺・船尾(ふのお)の者。四十才をすぎた頃から、信仰への道を歩みました。吉兵衛は、死んでゆけませぬ、というのが苦労であった。

四十年間の生涯をつづめて、人生の疑問が、死んでゆけませぬ、に総じてこめられていた。近畿その他の信者、師僧をたずね、西方寺の元明和上にめぐりあった。

死んでゆけませぬ。

和上、死んでゆけたらよいのか。

この一言、吉兵衛の目がさめた。死んでゆけるの、ゆける、を求めた所に、誤りがあった。ゆける、ゆけませぬは、吉兵衛の納得である。後に、わしゃびっくりしたでェ、重かったでェ、といっている。わが納得ではない。仏の力を聞くのである。浅原才市は、

   ただききたい ききたい むりがある
   きかせるひとは なむあみだぶつと
   もをす ほとけよ

という。

他力

 念仏は聞く一つである。だが、聞くに力がない。聞かせる仏が、すべてである。お前よ、お前よ、と聞こえ込んで下さる。

こんなもの 死んだらどうなります。

こんなもの 松のこやしになるなり やせ犬の腹を こやすなり どうでもしたらよい胴体じゃ

(昭和三十七年十一月)