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二十八 修正会 「九条 武子」

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法悦百景 深川倫雄和上

二十一 いのちの葉 「浅原 才市」
二十二 恋ごころ 「良寛上人」
二十三 世は夢 命は露 「良寛上人」
二十四 無邪気 「良寛上人」
二十五 大風のごとし 「物種 吉兵衛」
二十六 他力 「物種 吉兵衛」
二十七 許す母 「与謝野 礼巌」
二十八 修正会 「九条 武子」
二十九 親さま 「足利 源左」
三十 常不軽菩薩 「宮澤 賢治」
三十一 見聞知 「深川 倫雄」
三十二 仕えてぞ「行基 菩薩」
三十三 ひとの涙 「九条 武子」
三十四 くるしみの壺 「九条 武子」
三十五 この善太郎 「善太郎」
三十六 提婆尊者 「梁塵秘抄」
三十七 職業すなわち仏道 「兼好 法師」
三十八 寂しさの秋 「三木 清」
三十九 寂しき悔 「九条 武子」
四十 報恩講 「狐雲」
ウィキポータル 法悦百景

みあかしは 輝きみちて 誦(ず)す経に
み堂の春ぞ 明けそめにける
             (九条 武子)

御酒海(ごしゅかい)

 明けましておめでとうございます。

 元旦の御開山さまは、凛冽の中にお座りです。鳳凰のまう打敷。松に笹、枝垂れ柳を配したお花。ゆずり葉、だいだいをのせた五重一対の鏡餅。輪灯ほのめくお内陣です。前夜、鴻の間に用意した壺から、色衣五条の会行事が、御酒を銚子にくみます。み堂に運ばれた御酒は、紫衣(しえ)に、御下賜(ごかし)の菊花御紋の袈裟を召されたご門主さまによって、三宝の御盃に盛られ、お祖師さまに献げられます。開門前、五時からです。お障子は、閉められたまま、侍するものは会行事一人。血脈のご門主さまがなさる、たった一人の御祝儀です。

御流盃(ごりゅうはい)

 御酒海の儀がすみますと、鴻の間で、御流盃の事が行われます。総長以下各代表者などが、ご開山さまのお流れを頂くわけです。御門主さまの祝膳には、三宝に菱餅、昆布、勝栗などが配されます。年々に迎うる春は同じくとも、年々の想いはちがいます。ある年、武子夫人は、

元旦の 光みちたる 鴻の間に
君なき春を 久しとぞ思う

と、詠っています。御流盃に連なりながら、思うことは、あの人と一緒だったら。すみまして六時、元旦の修正会(しゅしょうえ)です。

(昭和三十八年一月)