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三十六 提婆尊者 「梁塵秘抄」

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法悦百景 深川倫雄和上

二十一 いのちの葉 「浅原 才市」
二十二 恋ごころ 「良寛上人」
二十三 世は夢 命は露 「良寛上人」
二十四 無邪気 「良寛上人」
二十五 大風のごとし 「物種 吉兵衛」
二十六 他力 「物種 吉兵衛」
二十七 許す母 「与謝野 礼巌」
二十八 修正会 「九条 武子」
二十九 親さま 「足利 源左」
三十 常不軽菩薩 「宮澤 賢治」
三十一 見聞知 「深川 倫雄」
三十二 仕えてぞ「行基 菩薩」
三十三 ひとの涙 「九条 武子」
三十四 くるしみの壺 「九条 武子」
三十五 この善太郎 「善太郎」
三十六 提婆尊者 「梁塵秘抄」
三十七 職業すなわち仏道 「兼好 法師」
三十八 寂しさの秋 「三木 清」
三十九 寂しき悔 「九条 武子」
四十 報恩講 「狐雲」
ウィキポータル 法悦百景

釈迦のみ法をうけずして 背くと人には見せしかど
千歳の勤めを今日きけば 達多は仏の師なりける
              (梁塵秘抄)

ダイバダッタ

 お釈迦さまは、ずっと昔、王さまでありました。その王さまは、アシ仙人に仕えて教えをうけました。千年のあいだ、供養を怠らなかった。その仙人が、実は今のダイバダッタであり、王さまはお釈迦さまです。ダイバは、シャカのいとこに生まれました。ダイバは、シャカ出家のあと、その妃、ヤショーダラを誘惑しました。ダイバは、シャカのさとりをねたみました。私は決してシッダルターに、ひとり勝利者の日を、たのしませはせぬ。シッダルターとは、シャカの名。ダイバは、息をひきとるまで、シャカに対する呪いに生きました。

 ダイバは、まことに呪いそのものであろうか。シャカの生涯にまつわりついて、はなれないダイバとは、一体何であろうか。ダイバはまた、王舎城の宮廷に悲劇を生みました。

シャカ

 ダイバのいないシャカは考えられない。ダイバのいることによって、み法が実人生の生き者とならないか。昔、ダイバはシャカの師でありました。

 親鸞聖人は、ダイバを大聖という。仏の使いである。ダイバとは、極悪人である。ダイバは私の中にいる。仏言(のたま)わく、ダイバは無量劫の後、必ず成仏することを得。

(昭和三十八年九月)