三十六 提婆尊者 「梁塵秘抄」
提供: Book
釈迦のみ法をうけずして 背くと人には見せしかど
千歳の勤めを今日きけば 達多は仏の師なりける
(梁塵秘抄)
ダイバダッタ
お釈迦さまは、ずっと昔、王さまでありました。その王さまは、アシ仙人に仕えて教えをうけました。千年のあいだ、供養を怠らなかった。その仙人が、実は今のダイバダッタであり、王さまはお釈迦さまです。ダイバは、シャカのいとこに生まれました。ダイバは、シャカ出家のあと、その妃、ヤショーダラを誘惑しました。ダイバは、シャカのさとりをねたみました。私は決してシッダルターに、ひとり勝利者の日を、たのしませはせぬ。シッダルターとは、シャカの名。ダイバは、息をひきとるまで、シャカに対する呪いに生きました。
ダイバは、まことに呪いそのものであろうか。シャカの生涯にまつわりついて、はなれないダイバとは、一体何であろうか。ダイバはまた、王舎城の宮廷に悲劇を生みました。
シャカ
ダイバのいないシャカは考えられない。ダイバのいることによって、み法が実人生の生き者とならないか。昔、ダイバはシャカの師でありました。
親鸞聖人は、ダイバを大聖という。仏の使いである。ダイバとは、極悪人である。ダイバは私の中にいる。仏言(のたま)わく、ダイバは無量劫の後、必ず成仏することを得。
(昭和三十八年九月)