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道楽 (どうらく)

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法輪

えっ!仏教語だったの?

愛_(あい)
悪魔_(あくま)
ありがとう
暗証_(あんしょう)
一大事_(いちだいじ)
一蓮托生_(いちれんたくしょう)
有頂天_(うちょうてん)
縁起_(えんぎ)
往生_(おうじょう)
億劫_(おっくう)
開発_(かいほつ)
我慢_(がまん)
祇園_(ぎおん)
快楽_(けらく)
玄関_(げんかん)
金輪際_(こんりんざい)
三蔵法師_(さんぞうほうし)
三昧_(さんまい)
四苦八苦_(しくはっく)
邪見_(じゃけん)
邪魔_(じゃま)
受持_(じゅじ)
精進_(しょうじん)
世界_(せかい)
世間_(せけん)
殺生_(せっしょう)
刹那_(せつな)
善哉_(ぜんざい)
退屈_(たいくつ)
大衆_(たいしゅう)
大丈夫_(だいじょうぶ)
達者_(たっしゃ)
他力本願_(たりきほんがん)
畜生_(ちくしょう)
超_(ちょう)
道場_(どうじょう)
道楽_(どうらく)
内証_(ないしょ)
ばか
悲願_(ひがん)
不思議_(ふしぎ)
法螺を吹く_(ほらをふく)
微塵_(みじん)
迷惑_(めいわく)
利益_(りやく)
臨終_(りんじゅう)
流行_(るぎょう)
流通_(るづう)
仏教語だったの

 昨今「道楽」という言葉は、ずいぶん旗色が悪い言葉になっています。「道楽息子」とか「道楽者」という言葉を耳にすると、ドキッとします。しかし、もともとは仏教語で「悟りの楽しさ」を表現した言葉です。また親鸞聖人は『正信偈(しょうしんげ)』で「信楽易行水道楽」(易行の水道、楽しきことを信楽せしむ)と言われています。

 人生を道に譬(たと)えれば、「道楽」とは「人生を楽しむ」とも読めます。それを私は「生活の味を味わう」と受け止めています。味には、甘い味、辛い味、酸っぱい味、苦い味、渋い味、醍醐味というのもあります。無限の味わいの世界があります。決してひととおりではありません。目の前の出来事から無限の味を味わいたいものです。

 先日、姑(しゅうとめ)を浄土へ見送られたお嫁さんに会いました。入院中もお嫁さんには冷たく、感謝の言葉もない姑さんだったそうです。辛い看病だったといいます。ところが、亡くなった後で看護婦さんや同室の方のお話を聞いて驚いたといいます。「うちの嫁はいろいろと世話をやいてくれる、いい嫁なんです」とお嫁さんをほめておられたというのです。その言葉を聞いて、お嫁さんは恥ずかしさと済まなさで涙がこぼれたといいます。

 人間には、他者の一面しか見えません。つまりひとつの味しか味わっていません。ところが、他者にはさまざまな面があります。目の前の出来事を無限に味わえる舌がほしいものです。味わいとは、甘いだけではありません。辛(つら)いことを辛(から)味にも転ずることができるのです。


武田定光 たけだ じょうこう・真宗大谷派因速寺住職 月刊『同朋』2001年7月号より


 出典と掲載許可表示(東本願寺出版部発行の月刊『同朋』)から転載しました。