いままで見えていなかった世界を 見せてくださる「智慧の光」
提供: Book
![]() 法語法話 平成16年 |
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他力と言うは 如来の本願力なり |
いままで見えていなかった世界を… |
人生とは その日その日の… |
仏光のもとにわれかしこしの… |
他力の信心を獲得するのは… |
私のあたまにつのがあった… |
手に合わない厄介な我の心… |
念仏の道は… |
生きている という事は… |
自力の念仏そのまんま… |
失敗はむしろ自分を知るために… |
かけがえのない自分の人生を… |
私どもが自力と考えていること… |
東井 義雄(とうい よしお)
1912年生まれ
「いのちとのふれあい」(探究社)より
もう二十年も前のことになりますが、自坊(じぼう)の講演会に東井義雄(とういよしお)先生がご出講くださったことがありました。六月下旬のその日はことのほか暑く、クーラーのない本堂で約一時間余り、汗だくになって一生懸命お話しいただいたことが懐(なつ)かしく思い出されます。先生は、細身の肩にくい込むような重いショルダーバッグを持参されて、ご著書の中から子どもたちの詩や作文を数多く紹介され、「いのちの芽を育てる」というテーマに沿って真宗教育の必要性を熱く語ってくださいました。
初めて接した先生の柔和(にゅうわ)なお顔、そして謙虚(けんきょ)で誠実なお人柄が、大変印象深く心に残りました。相手に問いかけるようにして話される姿勢、早速に拝受したお礼状の言葉の数々など、大切なことを教えていただく嬉しいご縁(えん)となりました。
先生が残してくださった色紙には、
静かに
そして確実に
その時が近づいてくる
という言葉が記されています。それは「ぼんやりするな、人生は短いぞ、死は確実にすぐにもあなた自身のものとなる、おろそかに今日を生きてはいけないよ」と、まだまだ先があるとたかをくくって若さに奢(おご)り、死を他人事(たにんごと)のように眺(なが)めている私への警鐘(けいしょう)の言葉となりました。
もっとも先生のお気持ちからすれば「残り少ない人生を決して無駄にはするまい、お念仏のなかで一日一日の重さを確かめ確かめ生きていきたい」と、あくまでご自身に向けて、誡(いまし)めの気持ちで書かれたのではなかったかと思われます。
七十九年間の先生のご生涯は、「今日しかない」「今しかない」という我が身の事実をしっかり見据(みす)えた人生であったと思います。苦しみのときも、悲しみのときも、仏の大悲(だいひ)に安んじ、智慧(ちえ)の光に照らされて、ともに出会うことのできたご縁の深さと尊(とうと)さをかみしめられた人生であったことがしのばれます。残された数多くの著作や教育実践活動の記録は、いずれもが「智慧(ちえ)の光(ひかり)」に輝いています。
また、ある年の年賀状には、先生の丁寧(ていねい)な文字で、 ご本願にであわない人生は、いくら長く生きても空(むな)しいと実感させていただくこの頃です。「生きる」具体をひっさげて、お聞かせにあずかりたいと存じます。お導きください。 とありました。
私たちも、ただ長生きすることだけを目的とするような日々の生き方をひるがえし、死に直面しているこのわが身の事実をひっさげて、死を超えるまことのいのちに目覚める日々でありたいものです。
貴島 信行(きしま しんぎょう)
1951年、大阪生まれ
真行寺住職・龍谷大学講師・中央仏教学院講師・本願寺派布教使
本願寺出版社(本願寺派)発行『心に響くことば』より転載
◎ホームページ用に体裁を変更しております。
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出典と掲載許可表示(真宗教団連合のHP)から転載しました。 |