六十七 タノム 「宇右エ門」
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うえもんさん 弥陀をたのむ味わいを 聞かして下さいナ
ヘイ 弥陀を たのまにや なりませんかいの
たのまにやならぬ様なら
如来さまが よき様に して下さいましょうぞいな
(播州大田 宇右エ門)
タノム
宇右エ門は、天保三年九月三日、兵庫県大田で往生した。七十五才。今から百三十年前である。古来たくさんの人々が、真宗の信心に工夫をしました。本人にとっては、大苦悩をして工夫した。一転してみれば、何のことはないのに信ぜられん、
スーッとせぬ、と考えあぐねる。タノムところがわからん、という。何かわかることであると思っている。心理学のように思っている。どこがまちがっているのであろうか。この私などと、胸に手をやっているが、実はこの私とおや様との間に空気がある考え方をしている。おや様の前の私を、はたから見ている考え方から抜けていない。タノム私は、字にも絵にも言葉にも手まねにもあらわせない。私は私である。
タノマセル
私は私を見ることできぬ。私を見、案じ、救い給うおや様を見るばかりである。宇右エ門は亀山御坊に参る。
宇右エ門さん 一口 御縁を下さいナ
この者をでございますそうナ
この者が、タノムでない。この者を、タノマせて救い給うのである。
(昭和四十一年四月)