七十 非常識 「臼杵 祖山」
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除かるる 身にしあれども み仏の
救いたまへる めぐみ尊し
(臼杵 祖山)
平均
臼杵先生といわれて多くの人から慕われたこの方は、昭和二十三年七十六才で亡くなられました。この方を知っている方も現に多い。私の兄二人は、この師の許で、中学五年間をすごしている。大分県に生まれ、法隆寺の佐伯定胤師に学び、ある時は防府に住み、大分県中津で終わられた。一生、妻なし。数人の書生をおいてのくらしは、
汝は薪をとれ 吾は水をくまん (広瀬 淡窓)
という風であった、と私の兄はよく話した。
かねて一団の人々とお経の稽古をしたことがある。たとえば、お経本の頂き方、頂く時なかなかうまく出来ない。一回目では、百人中、九十人がちがう。二回目で六十人がちがう。実際にやってもらうのである。三度目でも四十人がちがう。四度目でも二十人がちがう。八回目でまだ十人がちがう。もうこれで、その練習はやめる。するとその十人は、正しいのを覚えないままである。
以下
世の中は、常識の人、平均的水準の人が主である。十方三世の諸仏は、平均以下を切捨て給う。平均以下、最後の一人を切捨てない、弥陀の本願。親をも殺しかねないこの身、お経本の頂き方、八回けいこしても覚えぬこの身。他力は常識とはちがう。
(昭和四十一年七月)