七十六 中ぐらい 「小林 一茶」
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我春も 上々吉ぞ 梅の花
(小林 一茶 四十九才)
目出度さも ちゅう位也 おらが春
(小林 一茶 五十七才)
上々吉
明けましておめでとうございます。昨年まですっと会報を愛読されてありがとうございました。今年もお読み続けて下さい。
新年は快いものでございます。年々に迎うるお正月で、することも変りはないが、年々に想いはちがう。ちがうのが本当でありましょう。
人の心は進歩せねばならぬ。しょうもない正月もあれば、よしやるぞという正月もある。晴々と新年の気満つる年もあれば、晦日とどれ程のちがいがあると思う年もある。
意気ある男の若い時、一年の計は元旦にありというから、仕事は順調だぞ、今年の出足はいいぞ、何と目出たき正月かな、と張切るものである。
一茶の四十九才も、そうであった。よりより魂のかびを洗い、つとめて心の古みを汲みほす鋭い精神であった。
中位
一茶は五十才を越して、真宗を聞いた。そして育てられた。
吹けばとぶ 屑屋は 屑屋のあるべきように
門松も立てず あなた任せに むかえける
あなた、すなわち如来様である。一茶は、上々吉と喜ぶ心から、中ぐらいをよしとする心に育ったのである。上等をよろうとすると、大抵失敗する。中ぐらいをやろうとするがよい。己を知るというものだ。
(昭和四十二年一月)