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五十四 帰る旅 「小泉 義照」

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法悦百景 深川倫雄和上

四十一 舞台 「池山 栄吉」
四十二 信心の智慧 「善太郎」
四十三 無我・極楽への道 「中 勘助」
四十四 独楽 「明顕寺住職」
四十五 聖人の妻 「恵信尼公」
四十六 名号成就 「一遍上人」」
四十七 自力無効 「小川 チエ」
四十八 オコタルベカラズ 「浄泉寺 覆善」
四十九 夢の王 「後白河上皇」
五十 法の妻 「二条 弘子」
五十一 流星の光ぼう 「与謝野 晶子」
五十二 ご命日 「後生口説き」
五十三 苦境にうつ鞭 「九条 武子」
五十四 帰る旅 「小泉 義照」
五十五 老いらく 「佐藤 春夫」
五十六 しのびの殿御 「お軽」
五十七 上皇遠流 「後鳥羽上皇」
五十八 赤い牛 「宏山寺 僧僕」
五十九 大盤石 「九条 武子」
六十 先立ちし子 「有田 甚三郎」
ウィキポータル 法悦百景

楽岸は さぞ寂しかろう もう暮て
八十ちかく ゆきつまつたぞ
          (小泉 義照和上)

ゆきつもる 夢の旅路も 苦にならぬ
この坂こせば わが家なりけり
        (楽岸こと 藤岡 友二)

 今年の正月、豊田町の上野さんが、小泉和上の写真を、大きくして持って来て下さった。小泉和上は、大へんありがたい和上でありました。沢山の方々が、お育てをうけた。上野さんもその一人である。和上は、昭和三十二年七十五才で亡くなられました。私はたった一度、御縁あって御来化をうけた。小さな弱々しいお姿でした。一度でも御拝眉を得た私は、仕合せであります。偉いお方に会い得ることは、無上の幸である。今ありがたい方、偉い方があれば、百里の道を遠しとせず、お会いしておくがよい。人は世を去ったらもう追憶でしか会えない。私は九条武子夫人を知らない。生まれおくれたのである。小泉和上の老後は、信仰に偽りはないかと、自らを考え、かつ人にも問うた老後であった。

帰る

 凡夫をだますことは出来る。しかし、わが業はだまされぬ。人ごとではない。一切はおわる。この坂をこして帰らねばならぬ。まだ見ぬよそさまの家か、もう知っているわが家か。わが家に帰る。寂しき旅から、わが家に帰る。帰る家があるか。よかったなあ。

(昭和四十年三月)