四十六 名号成就 「一遍上人」」
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主なき 弥陀の御名にぞ 生まれける
称えすてたる あとのひと声
(一遍上人)
ねがい
一遍上人は、親鸞聖人が六十七才の年に、道後で生まれました。亡くなった時、五十一才でした。一遍上人は、十才で念仏に入り、三十六才の頃、お念仏の本義を聞きひらいたと、いわれます。親鸞聖人のお味わいと、非常に近い信仰の方です。この人の門下の人を、時衆とよびましたが、その人々は、自分の名を、有阿弥陀仏とか、照阿弥陀仏とか、つけました。略して有阿、照阿などと申します。親鸞聖人は、このような名をもつ人々から、御法義のおたずねをうけて、交際していられます。時衆でありながら、聖人のお弟子でもあった人が、いたわけです。
法蔵菩薩のねがいは、わが名を衆生に称えられねば仏にならずというのです。懈怠(けたい)なくせに、理屈を言いたがるわれわれが、お前ゆえに、お前ゆえにの仰せをきかずに来ました。いうなれば、受けるべき私が受けぬので、主なしであったことになる。如来様、聞かず、称えず、はかろうて、淋しい辛棒をさせました。
成就
阿弥陀様という町長の所に、配給うけにゆくように思っていたのに、お前に称えられぬと、仏にならぬと仰せをきき、あれあれと思わず称えることになった。弥陀は、名号として、私を主に生まれ出たのである。
(昭和三十九年七月)