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四十四 独楽 「明顕寺住職」

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法悦百景 深川倫雄和上

四十一 舞台 「池山 栄吉」
四十二 信心の智慧 「善太郎」
四十三 無我・極楽への道 「中 勘助」
四十四 独楽 「明顕寺住職」
四十五 聖人の妻 「恵信尼公」
四十六 名号成就 「一遍上人」」
四十七 自力無効 「小川 チエ」
四十八 オコタルベカラズ 「浄泉寺 覆善」
四十九 夢の王 「後白河上皇」
五十 法の妻 「二条 弘子」
五十一 流星の光ぼう 「与謝野 晶子」
五十二 ご命日 「後生口説き」
五十三 苦境にうつ鞭 「九条 武子」
五十四 帰る旅 「小泉 義照」
五十五 老いらく 「佐藤 春夫」
五十六 しのびの殿御 「お軽」
五十七 上皇遠流 「後鳥羽上皇」
五十八 赤い牛 「宏山寺 僧僕」
五十九 大盤石 「九条 武子」
六十 先立ちし子 「有田 甚三郎」
ウィキポータル 法悦百景

こま まわって 処をえて しずかにまわって おわる
         (島根 明顕寺前住職)

コマ

 四月下旬、島根県・岡見の西蓮寺に参りました。年寄というものは、よいものです。火鉢の上に、紙張の助炭のある宅なら、必ず丁寧なお年寄のいらっしゃる家庭である。西蓮寺の客間の助炭に、こま まわって・・・と書いてあります。老僧・栗山義雄師のおじ、益田在の明顕寺前住職の作である。この方は、井泉水(せいせんすい)にならった人であるとのこと。

 力まかせにこまをまわした。腕白の頃、早く静止して、長くまわるように工夫したものだ。こまは初めに、工合(ぐあい)のいいまわり場をさがすようにうろつく。広々とした居り場ではない。ほんの足もとの広さでよいのだ。さがしあてると落着いてまわる。おわりには、おわりを告げるようなそぶりをしておわる。 若々しいいのち、はげしい意欲、人はまず三十、四十まであわてるな。上にまれ下にまれ、仕事が決まる。然しまだ居り場に安住しにくい。中老、静かにいのちが燃焼しておわりに至る。

獨楽(こま)

 朝から一日中、コマねずみのように働く。夕べそれぞれの座につき、一服してやすむ。一生も一日も、何れにしろたった一人のきりきりまい。居り場を得て、いのちを燃やして居たい。

(昭和三十九年五月)