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十六 今を惜しむ 「兼好 法師」

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法悦百景 深川倫雄和上

一 遠い純情 「九條 武子」
二 みおやの涙 「九條 武子」
三 小賢しき分身 「九條 武子」
四 いたき鞭 「九條 武子」
五 みずからの道 「九條 武子」
六 ほろびの玩具 「九條 武子」
七 御遠忌 「浅原 才市」
八 うそ うそ 「浅原 才市」
九 待伏の茶屋 「浅原 才市」
十 くよ くよ 「浅原 才市」
十一 歓喜の称名 「浅原 才市」
十二 夏安居 「浅原 才市」
十三 一隅を照らす 「伝教 大師」
十四 狐客 「古 謡」
十六 今を惜しむ 「兼好 法師」
十七 寝ずの番 「浅原 才市」
十八 華やぐ命 「岡本 かの子」
十九 閉された生涯 「俚 言」
二十 はすの花 「聖覚 法印」
ウィキポータル 法悦百景

されば道人は 遠く日月を惜しむべからず
ただ今の一念 むなしく過ぐる事を惜しむべし
もし人来つて 我が命 あすは必ず失わるべしと
告げ知らせたらんに きようの暮るるあいだ
何事をかたのみ 何事をか営まん
我らが生けるきようの日 なんぞその時節に異らん ・・・
無益の事をなし 無益の事をいい 無益の事を思惟して
時を移すのみならず 日を消し
月をわたつて一生を送る 最もおろかなり
               (兼好 法師)


松の内

 新年おめでとうごうざいます。俵山は、年越しの雪で迎えました。心を少しよそゆきにし、家族と挨拶し、両親を訪(と)い、人と盃を交わしました。逢う人毎に、おめでとうを言う中に、松の内はすぎて、も早五日。お正月、お正月と言いもし、思いもしている中に、自分だけとり残されたようで、世は平生の姿になって了(しま)った。もう今年が五日ほど過ぎた。消えた。

 お前のいのちは、あす迄だと、人が来て宣告したら、のんびりはしていまいに。かねて無常ときき、言いもしていながら、無益のことに日を過ごしている。仏道を信ずる人は、日月を惜しむような、大様なことでは、いけないというのだ。


今の一念

 刻々すぎてゆく、ただ今を大切にせよといわれる。ほんとうに、もう取り返しのゆかぬ日々刻々だ。つなぎ止められぬなら、止めておきたい今日、ただ今。ああ、今年も五日消えた。

(昭和三十七年一月五日)