四 いたき鞭 「九條 武子」
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ねぎらいも むくいもなくて 新たなる
年は来にけり いたき鞭もち
(九条 武子)
おめでとう
雪景色すがしく、新年がまいりました。重い音をして、年賀状が配達される。道理めくことをいう人もあるが、賀状はよきもの、新年はめでたきものである。 そこで、年頭の思いを思います
年という者が、新しく来たわけだが、この者は、昨年と同じように、きっと鞭をもっている。今までの生きの中で、そう思っても参った自分であります。年というこの者は、色も形もなく、音もなく、ひと日ひと日、すぎてゆく。毎年大晦日になって、さよならとも、おいこらともいわず、去ってしまう。つかみどころのない年という者です。
それが元旦には、面相を替えて、ヌーとやってくる。年の終り頃、よくぞこの住みにくい世に、ひと年、己が邪心悪心と闘ったお前は、と賞めてもくれぬ。また、心まかせに、煩悩を熾らせた奴じゃ、とあらわに叱りもしない。
業
その年と、三十七回目のおつきあいです。聞法とは、形なく甲斐なきものかな。
(昭和三十六年一月)