「十三 一隅を照らす 「伝教 大師」」の版間の差分
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2016年10月4日 (火) 17:36時点における最新版
国の宝とは何物ぞ 宝とは道心なり
径寸十枚は 是れ国の宝にあらず
一隅を照らすもの これ即ち真の 国の宝なり
(伝教 大師)
一隅を照らす
これは伝教大師最澄が、比叡山で仏弟子を教育した時の学則、すなわち『山家学生式』の一節です。
径寸十枚とは、さしわたし一寸もある宝の玉十個ということで、むかし支那の梁の国王が誇った宝です。比叡山で、この学則の下に学んだのが法然上人であり、道元禅師であり、親鸞聖人でありました。この人達は、けっして国中を照らそうとした方ではありません。黙々として、わが足もとを照らしただけです。そういう生涯をつらぬいたのは、仏道への道心でした。
人を責め、ひとの世話をしたがる世の中です。人の領分まで照らそうとします。争いになります。まず、わが領分を照らそう。机の脚は、どの脚も一隅を支えている。自分の隅も照らせないで、人の隅まで照らすなかれ。
道心こそ平和の芯棒である。
(昭和三十六年十月)