操作

九十七 冥から冥へ 「無量寿経」

提供: Book

Dharma wheel

法悦百景 深川倫雄和上

八十一 行動の人 「足利 源左」
八十二 案ずるな 「浅原 才市」
八十三 仏恩深重 「親鸞聖人」
八十四 触光柔軟 「萬行寺 恒順」
八十五 おぼえている 「九条 武子」
八十六 自宗の安心 「満福寺 南渓」
八十七 忘れはてて 「親鸞聖人」
八十八 おぼつかない足 「九条 武子」
八十九 真の仏弟子 「善導大師」
九十 泥華一味 「浅原 才市」
九十一 睡眠章 「蓮如上人」
九十二 よろこびすでに近づけり 「覚信房」
九十三 表現の背後 「蓮如上人」
九十四 鍛えられざる精神 「無量寿経」
九十五 愚者の宗教 「鈴木 大拙」
九十六 念仏は感謝 「親鸞聖人」
九十七 冥から冥へ 「無量寿経」
九十八 今日の生 「九条 武子」
九十九 絶対絶命 「尾崎 秀実」
百 百代の過客 「松尾 芭蕉」
ウィキポータル 法悦百景

善人は善を行いて 楽しみから 楽しみに入り
明るみから 明るみに入るのであり
善人業善 従楽入楽 従明(じゅうみょう)入明
悪人は悪を行いて 苦しみから 苦しみに入り
冥(くらやみ)から 冥に入るのである
悪人業悪 従苦入苦 従冥(じゅうみょう)入冥
                (無量寿経)

 ある時、こんな話を聞いた。ある風呂屋に度々泥棒が入った。よく考えると毎週土曜日から日曜にかけてである。客の物をねらう、いわゆる板ノ間かせぎである。主任の人は、客に責められ通しである。春三月頃から秋も終りまで、まさに土曜日の男に苦労した。

板ノ間稼ぎ

 土曜日の男の発見と確認に努力した。その間も一万円、二万円と客はお金をとられる。主任は平身低頭である。ストーブ煙突の穴から刑事は終日見張った。十月後、客に化けた刑事が現場を押えて捕えた。数万円の稼ぎをしたとのことである。

冥に入る

 ある婦人が逮捕の報にかわいそうにと言ったら、何がかわいそうだ、こっちの心痛も考えずと叱られた。関係者は、夜もねぬ苦労でしょう。だが土曜日毎に通って来て、人の財布をねらわにゃならぬ業の人、捕えられねばならぬ業が、かわいそうだ。盗られる人は仕合せだ。盗る者は可哀相だ。

(昭和四十三年十二月)