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七 御遠忌 「浅原 才市」

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法悦百景 深川倫雄和上

一 遠い純情 「九條 武子」
二 みおやの涙 「九條 武子」
三 小賢しき分身 「九條 武子」
四 いたき鞭 「九條 武子」
五 みずからの道 「九條 武子」
六 ほろびの玩具 「九條 武子」
七 御遠忌 「浅原 才市」
八 うそ うそ 「浅原 才市」
九 待伏の茶屋 「浅原 才市」
十 くよ くよ 「浅原 才市」
十一 歓喜の称名 「浅原 才市」
十二 夏安居 「浅原 才市」
十三 一隅を照らす 「伝教 大師」
十四 狐客 「古 謡」
十六 今を惜しむ 「兼好 法師」
十七 寝ずの番 「浅原 才市」
十八 華やぐ命 「岡本 かの子」
十九 閉された生涯 「俚 言」
二十 はすの花 「聖覚 法印」
ウィキポータル 法悦百景

ごをんきがきた 上(じょう)どからきた ・・・
あんらくじのごをんき しゃばでつとめる
ごかい三のごをんきわ さいちが ごをんき
ごかい三ともりやいよ ごをんきわ ごをんほうしゃの
なむあみだぶつ なむあみだぶつ
ごをんきわ よいものよ ごをんきに
にょらい三の さいちがにょうぼにして ごせゆての
まいばんさいちわ にょらい三とねるげなよを
しまいにわ 上(じょう)どいむこをにいくげなよ
さいちわ ゑゑことしたの
                 (浅原 才市)

御遠忌

 今年、生きていることのうれしいことよ。今年、御遠忌にあうこと、この世でこの年に生きていること、日毎日毎がうれしくありがたい。私、俵山の人達とこの年を待ち、この月を待ち、この日を待ちました。

 三月十二日朝、京都についた時、私は京都に来たと思った。ご開山さまの土地に来たのです。御遠忌の、その地に来たのです。お迎えの方が、萬里の遠路をしのぎ、莫大の辛労をいたして上京の方々、名聞人並ではありません。信心と御報謝の思いが大切でありますと、ご挨拶。さようさよう、ありがとうございます。

私のもの

 俵山からのつれは九十人です。その中、夫婦は十三組です。平均年令五十四才、十二日朝八時、本願寺前に着き手際よい導きに従って、堂内に進みました。

御影向

 広大な増設参拝席、真新しいたたみ。私の目を喜ばせ、私が御遠忌をつとめるために、立派にお待受けがすすめられたのである。御影堂内に着座、金障子が開かれると、輝くお荘厳です。明るい照明の中で、大蝋の焔が六つ、もの言うがごとくゆらめく。お供え二十六対、内敷の近代的模様、目もさめるお花、その中に、祖師は静かに御影向である。

 十時喚鐘。椽儀(えんぎ)が参進する。衆僧着座。お供えが、讃仏歌の中で伝供される。

たとい大千世界に
満てらん火をも過ぎゆきて
仏の御名(みな)を聞く人は
永く不退にかのうなり

 ひびきわたる讃えのうた。ああ、ああ、今ぞ御遠忌が来た、お浄土から来た。御開山さまを乗せて来た。御開山さまが、お浄土をつれておいでた。

 お祖師さま、おいでなさいませ。私もただいま参りました。暫く一緒に、お前に居らして頂きます。ご開山さま、あなた、今日はもやいの御遠忌でございます。

 何という嬉しい、この日この時、私の御遠忌、お祖師さまが、迎えに来て下さった御遠忌、御遠忌。

この道

 お祖師さま、あなた様、随分お辛うございましょう。ご開山さま、あなたがこの道を切り拓き、歩んでくださったので、私も御跡を歩めます。ありがとうございます。如来さまから呼びかけての南無阿弥陀仏であると、あなたは教えて下さいました。

 ああ、この道、御開山さまの道、親鸞さまの道。ええことをした、この人に会うた、この人の道を聞いた。如来さまに会う道、会うた、会うた。

(昭和三十六年四月三日)