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骨髄ガンの為 8

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骨髄ガンの為、四十五才で往生を遂げた広兼至道君、貴方のご報謝の営みが偲ばれます。

貴方のキリ絵、ご開山さまと恵信尼さま、それにお子達三人、旅の姿の後影。聖人と恵信尼さまとがナンマンダ仏、纏り歩まれるお子さまがたもナンマンダ仏。これが広兼さん貴方と奥さん坊や達三人の姿と重なり映って胸にしみ入ってきます。

去年十月二日貴方の葬儀の日、父上と奥さんとの間に三人並んだ坊や達、私の向う正面に見えてます。

お寺方のご導師が道俗時衆等と帰三宝偈を始められたその時、小学一年の一番下の坊やまで三人揃うて各発無上心、口許が動くではありませんか。お経本を持ちもせず最後の一句に至る迄唇が動きます。いまやお浄土の仏事の只中にあると、胸に充ちてくるものを覚えることでした。

西念寺の和上深川先生の常の仰せにあります。”ご報謝は、日常茶飯の習慣に保ってそれがクセになるほどに努力工夫して営みましょう”と。恩師の言に欣喜随順した貴方のご報謝の実践が、この三人の坊や達にまで及んで蓄積されてたことを知りました。

咳がこみ上げ骨がうずく中で、押し出すように貴方は呟きました。”声にお称名されないその時は、思いの裡をめぐらしてナマンダ仏、唇を動かし念仏申せぬその時は、心の裡に翻えしナマンダ仏、まだまだ盛大にご報謝が出来ますから”と語る貴方。

如来等同の至道如来と、和上さまのお便りにありました。貴方の個性人物のレベルにとどまらず貴方の中に満ちる如来さまを拝む、病院の見舞いは至道君、あなたを拝みに行くのだとも、和上のお言葉を承ることでした。


藤岡 道夫