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揉めぬいたリクルート事件 112

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揉めぬいたリクルート事件は、根廻し上手な竹下内閣を崩し、奉りあげられて総理となった宇野内閣も、座標軸も定まらぬ様子で揺れています。転変極まりない政治劇の舞台に登場する人達の中に、一群の政治家秘書があり、ついにその一人、総理の秘書が自殺しました。

こんな事件にありがちな鍵を握る人物の自殺です。その当事者ならでは窺えない閉ざされた事情、追いつめられた心境がありましたろう。これは論評して見ようもないものです。

この事を離れますが、自殺ということで聞いた次のような話があります。

或る若い夫婦のお子さんの一人に、重度の障害があります。今九歳になっていて、寝せ起こし、飲ませ食べさせ100%の介護が要る。時折発作がきますのに緊急処置が要ります。その必要から県外に病院を求めて家を構えておられます。その奥さんに聞きました。

「病院のケースワーカーの方が、『障害のある子を抱えた親は、自殺しません』と言われます。『子供を残して死ぬなんて、障害児の親のそんな事例を聞いたことないよ』と、言われました。私もこの子を置いて先には死ねません」とキッパリした口調の話です。

常々、弥陀無量寿のお誓いを、慈悲至極のおいわれと伺います。親心の姿を眼のあたりにする趣きに、この若いお母さんの声を聞きました。

案じられてならぬ子の命に副うて”無量寿の声”がありました。ナンマンダ仏の声重なり聞こえ、命の裡に充満いたします。ナマンダ仏、この声、命に離れず一緒です。


藤岡 道夫