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山口県・俵山の西念寺 17

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山口県・俵山の西念寺、本願寺司教・深川倫雄和上さまに、昭和三十五年六月以来二十六年間随順しています。特にこの十余年間は、お三部経のご講義を毎月承りご法義の極意をお聞かせ頂いて無上のお育てを蒙っております。

和上さまの西念寺には、お手伝いのサヨチャンがいます。サヨチャンは中学を終えた年から俵山の温泉宿のあちらに一週間、こちらに十日間と引取られた先を六~七年も転々として、どこも長続きしなかったそうです。

それが西念寺に居ついて今もう二十二年。四つ五つの子供なみのお手伝いをし乍お寺に暮らします。サヨチャン物の数が分かりません。五ケ、六ケと数がふえるとそれはもう一ぱいなんです。物の道理もわかりません。お寺に居るようになってサヨチャンお念仏を聞きました。お称名絶え間ない和上さま。それにご家族・お同行のお念仏を耳にしてサヨチャンお念仏しようとします。

ナマナァマァ、まるでそれは赤ちゃんの片言のようなものだったそうです。今、朝夕の御飯の前には、必ず本堂にお礼をします。如来さまの前に座って、ナァマァダ仏。ご開山さまの前に座って、ナァマァダブ。そして善知識さまのご影の前に座って、夫々にナァマァダ仏。十五・六年も前に、私はこのお礼の姿を眼のあたりにしました。胸にこみあげてくるものを覚えることでした。

如来さまのお慈悲は極まりまして、資格・レベル無用・極限の能力に及びます。どんな愚かな拙い身にも間に合うナマンダ仏。もし頭脳弱ければ、片言にでもその口に表れて離れず一緒していよう、お慈悲を声に極めて下さいました。親さまのお慈悲の立働かれるご様子をサヨチャンのお礼の姿に、拝むことでありました。


藤岡 道夫