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世に、又得難い親友・広兼至道君 6

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世に、又得難い親友・広兼至道君。あなたの往生は、昨年九月三十日、数え四十五才の若さでした。

動かすと骨がくずれると気遣われる程、進行しきった骨髄ガン。あと一と月の命と診断が出たのが、一年前のこの5月。貴方はこの事実を自ら承知して往生までの四ケ月、たっぷりと豊潤なご恩報謝の病床でした。東西に活躍、稀にみる布教家だった貴方に約束のお説教先に向ける代わりの布教使さんの手配を一任されました。

年内一ぱい十二月までの約束を私が一覧表に写し終わったその時の事。”来年一月から後はもういいでしょ。その時僕はもう娑婆(ここ)にはいませんから。年末には喪中欠礼のハガキを出すはずですし、いずれ近い中に死亡通知を家内が出します折りには、藤岡先生、挨拶状の文面相談にのってやって下さいね”と、まことに凄絶な状況をにこやかに語る貴方。お念仏を申し乍らうなずくと、にんまり微笑んで貴方もうなずきました。

貴方は”凡数の摂に非ず”と仰言いますからと親鸞聖人のお言葉を反芻してました。信心念仏の身は真の仏弟子、流転は終わり、も早只の凡夫じゃありませんとね。み仏の智慧に同等、弥勒菩薩の覚りの位に同じ正定聚。覚りの仏となることは、命果てる一瞬に実現しますと。

喜びすでに近づけりと、お父さんが語りかけられたのを、有難いお説教だったとも聞かせてくれました。

すぐ帰って来ます。貴方はそう言いました。成仏は自己満足じゃなくて、阿弥陀さまのお救いの極まり、仏となった上からは、存分に衆生を済度を果たさせようとの下心、ご期待どおりにすぐ帰ってきますといいました。

お称名ご報謝の明るい命を拝ませていただきました。


藤岡 道夫