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ご縁を得て 84

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ご縁を得て長崎県の五島のお寺の報恩講に招かれて六日間、たっぷりご法縁に浸らせていただきました。

このお寺の総代さんが、紋付羽織に袴と威儀ととのえて、お給仕される姿を見て、伝統の重みを身に沁みて感じました。紀州和歌山からここに移り住んだ一族の幾つかの代表たちの手によって、本願寺の允許が願われ、初めて島に真宗の寺が建立されました。

ご院家さんがご案内下さいましたあるお宅では、家を新築された機会にお仏壇を新しく申し受けると共に、先祖から伝わり給仕されるご本尊さまの表装を、京都の表具店に出されました。

ところが見事な表装になってお帰りなった、ご本尊さま入仏のお勤めで、ご院家さんが改めてご覧になると、このご影像の裏の御判は、本願寺十四代寂如上人のもの。この村には外にも一族の本家筋に代々伝わる古いご本尊があるそうで、いずれも寂如さまのご判ものと推察されると伺いました。

寂如上人は、一六六二年に十四代を継承されています。今から三百二十年余を遡るはるか昔、西の荒海に浮ぶ島にお寺を招請建立し、一族ごとに本山下付の如来さまを安じては、廻りくるご正忌報恩講には、一族の長らが紋服に威儀を正してお給仕し続けました。

そして今も、口々に”ご開山聖人ご出世のご恩 次第相承の善知識の”と、お称えしている群参の人々に、私も声を揃え称名申します。

このお称えしておられるお姿、次第相承のまぎれもないお姿なんだなと拝みました。


藤岡 道夫