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お寺のご法座 97

提供: Book

お寺のご法座が近づいたある日、草取りをしようと境内に出た私に従(つ)いて、孫娘が庭に出て来ました。漸く二歳と半年になる幼い子です。

”やあ、おじいさんのお手伝いしてくれるの”と申しますと、
”うん、おじいさんのお手伝いする”
”えり子、お手伝いするよ”と、女の子だけに、口の先はなかなか達者です。

”さて、そうしたらまず、塵取りを持って来ようね。これに草を入れよう”と、私が塵取りを手に持ちますと、孫娘が口を出して、手を出します。

”えり子、一緒に持ったげる”そう申しまして、縦にしますと、孫娘の背丈ほどもある塵取りを持ち上げにかかります。

さして重いものではありませんが、内玄関の露地に飛び飛びに置いた踏み石を伝うて、こんな幼い子が物を抱えてたどれません。

”ようし、そんなにして、そこ持っててちょうだい”と、孫のしたいよにさせておいて、そのまま塵取りごと孫娘を抱きあげて、狭い露地を通り抜け庭に出ました。

親鸞聖人の仰せに伺います。弥陀本願のお誓いには、生死(まよい)の命をねらいの的に来て、ナンマンダ仏とお宿りの如来さまと、本願信楽(しんぎょう)するが他力だとお聞かせです。

俵山西念寺和上の仰せに、また伺います。

”本願を信楽するというのは、私が浄土の往生に、なんにもしないことです”とお聞かせです。煩悩に躓きとまどい、煩悩にもつれとどこうるまんまの私を、これが生死(まよい)の命ごとだと、丸ごと救う如来(おや)さまが、ナンマンダ仏とお聞かせです。


藤岡 道夫