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詩人大塚なお子 101

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詩人大塚なお子は、与謝野晶子と並び称される才能豊かな人だと聞きます。それがこの人、惜しくも若くして死にました。文豪夏目漱石は、早過ぎる彼女の死を悼んで”あるだけの 花投げ入れよ 棺の中”と、一句詠んで献げたといいます。以下はこの大塚なお子の”お百度参り”と題する詩、

一足踏みて 夫(つま)想い 二足国を おもえども 三足ふたたび 夫(つま)想う。女心に 科(とが)ありや。 朝日に匂ふ 日の本の 国は世界に 唯一つ。 妻と呼ばれて 契りてし 人はみ国へ 唯一人。 かくて みくにと わが夫(つま)と  いずれ重しと 問われなば  只 答えずに 泣かんのみ 戦場にある夫の身を案じ、無事を希(ねご)うて、お百度を踏むのです。建て前で言えば、国の勝ち戦を祈るのが国民のつとめごと。身を鴻毛軽きになして、国に捧げた命というのは、本音ではありません。妻たる身にとり切実なのは、たとえ手足はもがれましょうと、卑怯者よとののしられようと、兎にも角にも帰ってほしい、戻っておくれと念じます。堂々たる見識・思想を述べたてて、戦争反対となえるじゃない。唯ひたすら命請いするばかりです、とこの詩の心を読みました。

さて、元号改まりまして、平成元年。昭和が終りました。人により所によっては、昭和天皇の戦争責任有りや無しや、と論議も湧きます。がしかし大喪の礼の二十四日、振舞うべき仕儀知らず、所在なく一日過ごすより、昭和のみ代を送るべく、お念仏の一日にいたします。激動の昭和のみ代に押し揉まれたこの命を、大切にして下される阿弥陀さまを大切にして過します。


藤岡 道夫