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親鸞聖人のご恩徳讃仰 39

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親鸞聖人のご恩徳讃仰の季節となり、各地に報恩講が営まれます。

この地上にはじめてお三部経の真価が鮮明になって、阿弥陀さまの本願名号のおみ法(のり)がその全容を顕したのは、ひとえに聖人のご出世のご苦労によります。 とりわけ八十才前後から御歳九十才、ご往生までの十年ほどは壮絶なまでのご活動ぶり。

一年三百六十五日、聖人の手に握られる筆の穂は、連日タップリ墨を含みます。乾くいとまは一日たりともありません。

沢山の書物を著されます。さらにお住いの京都から関東地方に住む同行衆の群に向けて多くの便りを書き送られます。そのお手紙は、受け取った同行の手許に大切に保管され、伝え残されて今日に及びます。

また手紙によって告げらるる、おみ法の義(こころ)を味わい保つべく、沢山の同行たちの手で写しとられ、これも大切に伝えられました。

正元元年、聖人八十七才、十月廿九日のお便りがあります。この中に、かな文字で、かくねむばう・かくねんばう、と二人の同行の名が見えます。が、こうして耳で聞くと解りません。

はじめの覚念の名は、まみむめも、の<む>を使って、かくねむと書いて念仏の念という字だとあらわされます。次の覚然は、天然自然といったり、野生の山いもを自然薯(じねんじょ)というときの然(ねん)という字です。

聖人は常に、かな文字の一つにも充分に心をお配りになって、厳密に使い分けられました。これを八十七才というお歳で、明晰に苦もなく果たされたその精神の冴え、まことに感嘆至極、有難うございます。有難うございました。文字どおりご開山聖人出世のご恩でございます。


藤岡 道夫