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東京上野動物園 25

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東京上野動物園で、子供を産んだオランウータンが、赤ん坊に乳を呑ませませんでした。子供が啼きます。そうしますと母親は本当に可愛ゆうてならない様子で、赤ん坊の体中をなめまわし体をゆすってあやします。しかしめんどう見ても乳を呑ませないのです。抱きあげて自分の顔のそばに引きよせますから、赤子は胸の乳が吸えません。

本能なんでしょうね、お乳を呑もうと赤ん坊は、母親の顔のあたりのそこら中、やたら吸いついて乳を欲しがります。

二日、三日と過ぎます。赤ん坊が弱ります。そこでやむを得ません、四日目に母親を麻酔入りの飲み物で眠らせました。

赤子を乳首に寄せてやりますと、息もつかぬ勢いで乳を吸います。一回二回三回と呑みこみました。遂に一四二回も赤ん坊はお乳を呑みこみました。まるで手品を見るように赤ん坊のお腹がふくらみます。

やがて麻酔がさめました。しかし又も母親が赤子を顔元近く抱き上げます。再び赤子は乳が飲めなくなりました。

実はこの母親、生まれた時その親のお乳が出ませんでした。それで人工哺育で育てられたのです。胸に抱かれてお乳を飲んだ経験がないのです。悲しいことに親の乳首を知らないまま育って子供を産んだのです。

私はお念仏申します。父が母がお念仏申しました。お祖父さんお祖母さん、いや遥かな昔遠い遠い親たちから、お念仏お称名の声が伝わり流れて私に到りました。

智慧と慈悲との親さまが、ナンマンダ仏と私に到り届いて下さいました。彼岸の浄土に往きつく命とまでなられたお念仏。ナンマンダ仏の親さまです。


藤岡 道夫