「観無量寿経 71」の版間の差分
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2009年7月29日 (水) 13:51時点における最新版
観無量寿経の講義テキストの一三〇頁は、沢山の書き込みで上下左右の欄外が埋まっています。
その中に”広兼至道は、遠くへいくのではない”と、深川倫雄和上のお言葉が一句納まっています。そしてその言葉から一本の線が引かれて”阿弥陀仏去此不遠=阿弥陀仏は、ここを去ること遠からず”という観無量寿経の文字を、赤のマジックで強く囲んでいます。
この講義は、昭和六十年五月廿四日、山口の教務所で行われています。この日の朝、深川倫雄和上は大竹の国立病院を見舞われます。骨髄ガンの末期症状で、あと一と月の命と告げられ、これを承知の広兼至道君に、臨終説教に及ばれました。この様子は、今年出しました『阿弥陀さまが、ごいしょです』という、私のテレホン法話集に納めています。
今蘇ってくる光景があります。臨終法話と観経の講義が行われた翌る日、病院を訪れた私に、広兼さんが申します。
”藤岡先生、ゆうべの観経は、去此不遠・ここを去ること遠からずのところでしたね”と、ニッコリします。 ”うん よかった! 広兼至道は、遠くへいくのではないって、先生が仰言ったよ”と、申しましたら、”今日が目的、これに来て同居ですもんね”と、胸から腹を一とめぐり、両手で撫で廻します。 あと一と月の命と知ったベットの上で、呟やいたにちがいない。今日、山口の観経は”阿弥陀仏 ここを去ること遠からず”と。
講義の席に連なる思いを胸に追うて。”ここを去ること遠からず”と。今月は至道君の三回忌です。
藤岡 道夫