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「集団で暮らす動物社会 28」の版間の差分

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(1 版)
 
(相違点なし)

2009年7月29日 (水) 13:51時点における最新版


集団で暮らす動物社会では、恵まれない体のメンバーとりわけ赤ん坊や幼い子供に対して、徹底した保護行動といわれるふるまいのあることが観察されています。

例えば猿の群は絶大な権力で群を掌握する、所謂(いわゆる)ボスを頂点に上から下に向って雄猿の序列があります。下の位の雄は意味もなく上位の雄猿には近付けません。

地位を脅かすと常に警戒されていて接近すると忽ち猛烈な攻撃を受けてしりぞけられます。

ところがボスや上位の雄猿に近付いて親密にふるまいたいその時は、下の位の雄猿がそこらに居る子猿を一頭拾いあげます。子猿を胸の正面に抱えて接近すると、ボスも上位の雄猿たちもまず攻撃することはありません。

雌の猿も独りの時には、雄猿のひどい攻撃を受けることがしばしばあります。しかし赤ん坊を抱いたり子猿を連れている場合には、まずどんな雄猿の攻撃も受けません。

そこには弱味を持つ立場が見守られ、脆く危うい命の保護行動が、徹底して行われています。いわば慈悲の精神に高まり及ぶ、その原(もと)の形がうかがえる話と申せます。

今、弥陀の名号、南無阿弥陀仏のおいわれを承ります。身の煩い絶えず、心の悩み湧いて離れぬ凡夫人、やがて果てる命を抱えこんで名号は仕上げられました。

親さま、南無阿弥陀仏のお仕上げには、弱き心、脆き命を見込んで、取り込み抱かれました。まさに弱者へ弱者へと深まりきった、お慈悲の極まるところから、南無阿弥陀仏が成りました。名告りの親さま、声の如来さまが、今私の命に漲り満ちていて下さいます。


藤岡 道夫