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今年の秋 54

提供: Book


今年の秋、総理大臣が変ります。総理首相の任期切れでなく、自民党の総裁任期が終わることに基づき、自民総裁が変る。

ひいては責任政党の自民党が、圧倒的多数で推す首班候補が、当然我が国の総理大臣になる道理。次期総裁候補をニューリーダーと言い、三人の方が話題でした。そこへ俺がと名告りを挙げた人がある。この人が率いる派閥に属するニューリーダーとの間に、怨念からまる角逐が激しくなりました。

将来に亘る地位・名誉、そして政治資金のプール源を見込んで、有名無名の政治家が繰り拡げる融合離反の舞台劇です。

さて明治、大正の時代を画した、英語学者・斎藤秀三郎先生は、編纂辞書にその名を今に残し、立派なお方であったと伝えられます。この斎藤先生が亡くなられて、遺品の中に二つの柳行李がありました。中には開封されないままの手紙が、一ぱいつまってたそうです。手紙を開いて読むその時間を惜しんで、手掛けた辞書づくりに没頭された先生の生涯を物語るエピソードです。

”世人薄俗にして、共に不急の事を争う”と、大無量寿経にうかがいます。世の人おしなべて、急がぬでもよい事を、争い合っていると、阿弥陀さまが見破って下さいました。

深川倫雄和上は、ここを”世の中の事は緩・急ともに急ぐことではない。真に急なることは、一大事なり”と、聞かせて下さいます。

お領解文に”後生の一大事”とあります。この世に命を享くることは他でもない。我能(われよく)汝を護るという弥陀の仰せに、値(もうあ)うが目的です。親さまの救いの目的・ナンマンダ仏の標的は、煩悩業苦のこの身です。

お念仏はお浄土行きの手続きでなく、今日が目的、只今がお救い成立の現場です。


藤岡 道夫