まことのご縁 みんなの法話
提供: Book
まことのご縁
本願寺新報2006(平成18)年1月10日号掲載
大分・芳蓮寺衆徒 中島 恭敬(なかしま きょうけい)
仏前結婚でご本尊贈る
私が事務を担当する大分教区の仏教婦人会連盟では、五年前からダーナ活動の一環として「仏前結婚式」に力を入れています。
別院やお寺などでの挙式をおすすめし、式を挙げられたご門徒には〝仏さま〟(ご本尊)をお届けしようというものです。
すなわち、「仏前結婚式の奨励」だけではなく、ご門主がかねてからおっしゃっています「ご本尊を有縁の方へ」という二つのことを同時に進めさせていただいているのです。
現在、少しずつですが、成果も表われてきています。
そのような中で、担当者としての責任をはたすべく...かどうか?昨年の秋、私も四日市別院で仏前結婚式を挙げさせていただきました。
それはそれは、私にとって人生最大のご縁をいただいた、と感謝しています。
ホンモノ?ニセモノ?
ところで、親鸞さまは「真(しん)」と「仮(け)」と「偽(ぎ)」という言葉をお示しになっています。
「真」とは、真実・まこと=ホンモノですね。
「偽」とは、偽(いつわ)りニセモノですね。
そしてまん中にもう一つ「仮」=仮(かり)のもの、ということです。
私たちはよく日常会話で「仮に○○だったら・・・」などといいます。
仮に一日百円としたら、三日で三百円、十日で千円...というふうに。
つまり「仮定」の話です。
でもそれは決してうそや偽りの話ではありませんね。
みなさんは地球の赤道の長さをご存じでしょうか。
確か学校で「約四万キロ」と習いましたね。
つまり四千万メートルです。
国際単位の一つであるメートル。
これはその昔、北極から赤道までの距離、すなわち地球の周囲の四分の一に当たる子午線の距離を測り、その一千万分の一を一メートルと定めました(現在の定義は異なります)。
言い換えれば、当時は地球がまん丸と考え、地球の周囲を「仮に」四千万として、その四分の一を実際に測定し、そこから「メートル」という単位を定めたことになります。
つまり「仮に」ということは、うそ偽りや間違いなどではなく、正しいものごとを導き出す時によく用いるようです。
自力はなれ真実信心に
では親鸞さまのおっしゃる「仮」とは何でしょうか。
その中の一つに「仮といふは、すなはちこれ聖道(しょうどう)の諸機(しょき)、浄土の定散(じょうさん)の機なり」(註釈版聖典265ページ)というお言葉があります。
「仮」とは、自力聖道門の人々、そして浄土門のなかの自力の人々であるとおっしゃっているのです。
こうして法話を読んだり、朝夕にお仏壇にお参りし、お念仏を口にしていても、「自力」のこころであったなら、それは「真」ではなく、「仮」だということになります。
煩悩にさいなまれ、自己中心的な思いを離れることができない私たちは、そのようなものを目当てに建(た)てられた阿弥陀さまのご本願であるにもかかわらず、その自己中心的な思い故に、阿弥陀さまのお救いを人間の知恵ではからい、分別(ふんべつ)して、疑ってはいないでしょうか。
「聖道権仮(しょうどうごんけ)の方便に 衆生ひさしくとどまりて 諸有(しょう)に流転(るてん)の身(み)とぞなる 悲願の一乗帰命(いちじょうきみょう)せよ」(同569ページ)
永らく迷いの世界を流転してきたのは、ご本願におまかせする心に欠けていたからだとおっしゃいます。
私たちは決して「仮」にとどまることなく、「真実信心」のご縁にあわせていただき、お念仏をよろこぶ身とさせていただかねばなりませんね。
私たちが生活の中で出遇(あ)わさせていただくご縁は、大きなものもあれば小さなもの、あるいは中くらいのものも、たくさんたくさん、数限りなくあります。
そして、そのご縁の深さ、不思議さにいつも驚かされます。
そんな私たちに、もっともっと、そして、大きな大きなご縁があるよ、と親鸞さまは教えてくださっています。
私も昨秋、阿弥陀さまの前で結婚という人生最大のご縁に遇わせていただいたことを心よりよろこばさせていただいています。
そして、少しずつですが、かみしめさせていただいているところです。
なのにこれ以上に、もっともっと大きなご縁にあずかっているなんて...ほんとうにたいへんなことです。
お互いに「真実」に出遇い、共によろこんでいけたらいいですね!
出典:「本願寺ホームページ」から転載しました。 |