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ありがたいご縁にアローハ! みんなの法話

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ありがたいご縁にアローハ!
本願寺新報2003(平成15)年2月1日号掲載
ハワイ開教区開教使 西山 真道(にしやま しんどう)
24歳で単身アメリカへ

私が開教使を目指し日本を離れて英語を学ぶためにアメリカへ渡ったのは、二十四歳の夏の終わりでした。
初めての一人での渡米。
そして、コロラド州の人口約二万人の小さな町に十カ月ほど住みましたが、最初は緊張と戸惑いの連続でした。

まずは言葉です。
相手が何をしゃべっているのか全くわからないし、私もしゃべることができず苦労しました。
ハンバーガー一つを注文するのも困ったものです。
五、六カ月すると少しは言葉が理解できるようになっていましたが、しゃべるのが怖くてうまく話せない状態でした。

しかし、その頃、大学の寮で知り合った友人の紹介で、病院でのボランティアを経験することができました。
言葉もうまくしゃべれないのに気軽にボランティアをさせてくれる病院に少々戸惑いを覚えながら、薬局から病棟まで薬を運んだり、シーツ交換をしたり、食事の世話、車椅子を押すなどの手伝いをしていました。

ある日の事、いつものように病院の事務所にいくと、「シン、あなたに会いたいという人がいるから、この部屋に行って下さい」と言われ、「誰だろう?どうして私が?」と心配しながら訪れると、そこは病院専属チャプレンの部屋でした。
年配の牧師さんが座っておられ、「シン、あなたは将来アメリカで仏教のお坊さんになりたいそうですね。
そのためにここに勉強に来たと聞きましたが、本当ですか?」と聞かれるので、私が「ハイ、そうです」と答えると「わかりました。
それじゃ今日から私と一緒に行動しましょう」と言われたのです。

言葉より気持ちが大切
それからは、彼の後をついてまわり、病院専属牧師はどんな活動をしているのか、医師、看護婦、患者、そして、その家族たちが何を牧師に求めているのかを約三カ月ほど見せてもらったのです。
病院では誰もが不安で孤独ですが、その不安な気持ちを共有すること、そしてゆっくりと聞いてあげることが一番大事だと教えられました。

それから、英語を話すことにストレスを感じていた私に、「シン、あなたに仏教を伝えるという大きな目標があるのなら、言葉をうまくしゃべることも大事だけど、一番大切なのは伝えたいという気持ちですよ」と励ましてくれたのも彼でした。

その言葉を聞いたとき、「いつもいい自分を見せたい、失敗したり、英語がしゃべれない恥ずかしい自分は見せたくない」という自分本意の私に気がつきました。
アメリカに何のために来たのか? 海外で伝道できる開教使となると言って日本を後にした自分が、その道を歩む上で一番大切な「海外でみ教えを伝えたい」という気持ちを見失うことなく、いつも持ち続ける大切さを教えられた言葉でした。
それからは、このご縁のおかげで躊躇(ちゅうちょ)することなく英語を積極的にしゃべろう、そして私の思っていることをすすんで伝えようという気持ちになったのです。
この牧師さんとの出遇(あ)いは、今の開教使生活において貴重なご縁となりました。

ナモアミダブツは英語?
一度帰国し、ご本山から開教使として任命を受け、再び日本を離れてハワイ開教区に着任してもう十二年が経とうとしています。
いつの間にか二人の子どもに恵まれ忙しい毎日を送っています。
長女も七歳になり、四歳になる保育園に通う息子も育ち盛りです。
毎日曜日はハワイ別院のダーマスクール家族礼拝にお参りします。

先日、その娘が私に「お父さん、日本語でナモアミダブツは何て言うの?」と聞いてくるのです。
娘にとってナモアミダブツの発音が英語だと思ってたんですね。
そこで「日本語も英語もナモアミダブツでいいんだよ」と言うと、「ふーん、そうなの? OK!」と言って納得していた様子でした。

しかし、娘との会話を通して、お念仏、仏さまのみ名である南無阿弥陀仏のありがたさといいますか、アメリカで生まれ育っている娘もありがたきご法縁をいただき、いつでもどこでも変わらぬ真実のよび声、広大な深い大慈悲のよび声に包まれながら育っていることに、あらためて気付かされたことでした。

海外開教使を目指してからの時間を振り返って見ると、さまざまなご縁に遇わせていただきました。
そのご縁に今も生かされて、ここハワイで開教生活を送っています。

『歎異抄』に「弥陀の五劫思惟の願をよくよく案ずれば、ひとへに親鸞一人がためなりけり」(註釈版聖典853頁)と、聖人のお言葉にありますように、いつもおろおろと不安な毎日を過ごしている、避けることが出来ない生老病死の真実から目をそむけているこの私こそが、如来のお目当てであった、そして、いつも願われて、本願のはたらきの中に生かされている自分であったと聞かせていただくとき、日本で、ここハワイで、さまざまなご縁を通して真実の教え、浄土真宗のみ教えに遇わせていただいていることを有り難く思います。

ここキリスト教社会のハワイで、いつまでもたくさんの人たちがお念仏のみ教えに出遇っていただけるよう、初心を忘れず、日々精進していきたいと思っています。
日本の皆さん、アローハ! そして、Namo Amida Butsu in Gassho


 出典:「本願寺ホームページ」から転載しました。
http://www.hongwanji.or.jp/mioshie/howa/