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十二 夏安居 「浅原 才市」

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法悦百景 深川倫雄和上

一 遠い純情 「九條 武子」
二 みおやの涙 「九條 武子」
三 小賢しき分身 「九條 武子」
四 いたき鞭 「九條 武子」
五 みずからの道 「九條 武子」
六 ほろびの玩具 「九條 武子」
七 御遠忌 「浅原 才市」
八 うそ うそ 「浅原 才市」
九 待伏の茶屋 「浅原 才市」
十 くよ くよ 「浅原 才市」
十一 歓喜の称名 「浅原 才市」
十二 夏安居 「浅原 才市」
十三 一隅を照らす 「伝教 大師」
十四 狐客 「古 謡」
十六 今を惜しむ 「兼好 法師」
十七 寝ずの番 「浅原 才市」
十八 華やぐ命 「岡本 かの子」
十九 閉された生涯 「俚 言」
二十 はすの花 「聖覚 法印」
ウィキポータル 法悦百景

上(じょう)どから ごをんきが
さいちがこころい ひをつけにきたよ
なみあみだぶつの ひをつけて いんだよ
あとわ ををごと きやさりやせんよ
いつも ぽやぽや ぽやぽやと
とても このひわ きやさりやせんよ
をやのこころが きやさりやせんよ
ごをんうれしや なむあみだぶつ
            (浅原 才市)


 今年は、祖師の七百回忌の年である。今年の俵山夏安吾は、それにふさわしく盛大であった。前後六日間、それは最早われわれの仕組んだものではない。講師和上も、法友大衆も、私にとっては、浄土から来たものであった。少し宛(づつ)育てられてはいるが、こうして、殊に大きな火をつけられた私は、懐炉の灰かモグサ。そして夏安吾は、往んでしまった。残って消そうにも、消されぬ火が、法悦が、ぽやぽやとぬくい。

 下関の辻野さんが、夏安吾はええの、これがたのしみでの、と喜ぶ。金尾さんは、沢山の熱心の方達と、同座さしてもらい、心の奥にしみついた感激と述べる。岡村さんは、我家の親様が一入(ひとしお)なつかしく、一人涙し、ご法縁の酔いが、今も身心に一ぱいとのお便り。わが心の煩悩共は、大騒ぎである。夏安吾のあとは、煩悩共はおおごと。

 こうして仏さまは、私を育てて下さるのか。うれしいこと。

(昭和三十六年九月)