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私の大切なもの<br/>
本願寺新報2005（平成17）年11月10日号掲載<br/>
布教使　山上　正尊（やまがみ　まさたか）<br/>
「むね」とは中心表わす<br/>
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「宗教」という言葉はいろいろなニュアンスを持ち、定義をすれば宗教学者の数だけある、と言われるほどです。<br/>
この言葉は明治時代になってから使われるようになった言葉ですが、その一文字一文字の意味をヒントに私たちの宗教を探ってみましょう。<br/>
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まず「宗」の字は「むね」と訓読みします。<br/>
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「むね」と書いてあると体の胸を想像します。<br/>
胸は体の中心にあります。<br/>
日本語で「むね」というのは「真ん中」「中心」を表わす言葉のようです。<br/>
家にも「棟（むね）」があります。<br/>
屋根のてっぺんで家の中心を貫き、水平に渡された大きな木を棟木といいます。<br/>
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また「宗」と同じ意味を表す「旨」という字も「むね」と読みます。<br/>
要旨・主旨などの熟語があるように、宗教の宗の字は「かなめ」「おもなもの・あるじ」という意味です。<br/>
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次に「教」の字は、「おしえる」と訓読みします。<br/>
ただし私が宗教と対面する場合、私は「おしえる」側ではなく「おしえられる」という立場です。<br/>
この字も熟語を探すと、教育（そだてられる・はぐくまれる）、教諭、教訓（さとされる）、教導（みちびかれる）などがあります。<br/>
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ですから宗教という言葉は「私の中心・要となるもので、私を教えて諭して育てはぐくみ、導いていくもの」を指します。<br/>
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死に直面しすべて失う<br/>
ところで、私の生活の中で中心になるものは何でしょう。<br/>
実は私たちはこの中心になるもの、大切にしているものが何であるかを判断することによって、私の生きていく方向を決めています。<br/>
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たとえば友達と旅行に行く約束をしていても、その日に家族が倒れたと知らせがあれば病院へ駆けつける、といった具合です。<br/>
私にとって大切なものが変われば、生きる方向も変わっていきます。<br/>
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さて、私にとってこれが大切だと思っているものを何か一つ思い浮かべてください。<br/>
健康、仕事、お金、友達、家族......、何でもいいですよ。<br/>
その大事なものは、私の一生涯を支えてくれますか？壊れたり失ったり役に立たなくなったりして、大切でなくなるものではありませんか？<br/>

いままで頼りにしていたものが頼りでなくなる一番大きな状況は死に直面するときです。<br/>
一生かかって貯めてきたものは置いていかねばならないし、好きな人とも別れていかねばなりません。<br/>
これが大切だと思っていたものが壊れていき、失っていくときです。<br/>
実はこの問題をテーマにしているのが仏教です。<br/>
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「死ぬことと生きることとどちらが好きですか？」<br/>

こう尋ねると、誰もが生きる方がいいに決まってるとお答えになるでしょう。<br/>
生は希望にあふれ、死は絶望でしかない。<br/>
生はいいことで死はわるいこと、と考えるのが私たちのいのちの理解です。<br/>
しかし今日一日過ごしたということは生から死へ向かっていますから、希望から絶望へ、いいことからわるいことへ、意味のあるところから意味のないところへ、プラスからマイナスへと一日を過ごしたことになります。<br/>
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「生と死」を丸ごと包む<br/>
このように「生と死」「善と悪」といのちを分けて理解することを「分別」といいます。<br/>
阿弥陀さまはいのちを見るときに私たちの分別を持ち込みません。<br/>
つまり生と死を分けて理解をしないのです。<br/>
生まれたことは死ぬことが約束されたことですし、生きているということは死んでいっていることと同じだからです。<br/>
私たちの考える生と死、善と悪を丸ごと包み込んで私のいのちを見ておられます。<br/>
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「あなたのいのちは数えることのできないほどの因と縁が重なり合って恵まれたいのちです。<br/>
唯一の大切ないのちです。<br/>
だからこそあなたのいのちが本当にいのちらしいあり方であってほしい」と、無分別の眼で私のいのちを見て願っておられます。<br/>
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阿弥陀さまはその願いを私に届け、人生をお念仏して仏になる歩みに転換し、死んでいくとしか思えなかった人生を、お浄土に生まれていく人生であると知らせてくださいます。<br/>
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この阿弥陀さまのおはたらきかけを一生涯価値の変わらない大切なものとして受け取っていくのが、私たちの宗教・浄土真宗です。<br/>
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