仏法のことは急げ―いのちの無常にまなぶ― みんなの法話のソースを表示

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仏法のことは急げ―いのちの無常にまなぶ―<br/>
本願寺新報2001（平成13）年1月1日号掲載<br/>
瓜生津　隆真（うりゅうづ　りゅうしん）（京都女子大学学長）<br/>
出る息入るを待たず<br/>
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え．秋元　裕美子<br/>
用事がある、仕事がある、といっていたら、そのような用事や仕事は一生ついてまわり、つきることがありません。<br/>
そのために仏法を求めることが後回しになるのも当然です。<br/>
まだ早いとか、定年になって暇ができてからとかなどと考えているなら、いつまでたっても仏法は聞けません。<br/>
それでは一生涯仏法は無縁ということになってしまいます。<br/>
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これにちなんで思い起こすのは『蓮如上人御一代記聞書』第一九八条（1294頁）に出ている金森（かねがもり）の善従（ぜんじゅう）のことです。<br/>
善従は蓮如上人の門弟で、道西ともいい、近江金森（滋賀県守山市金森町）に住して、蓮如上人の本願寺再興を支えました。<br/>
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ある人が善従を訪ねて来たときのことです。<br/>
その人がまだ履き物も脱いでいないうちに、善従は仏法のことを話しかけました。<br/>
傍にいた人が「まだ履き物も脱がれていないのに、なぜそんなに急いで話されるのか」と言ったところ、「出る息は入るを待たないという無常の浮世である。<br/>
もし履き物を脱がれぬ前に死去されたら、どうするのか」と言われたというのです。<br/>
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「出る息は入るを待たない」と言った善従の言葉は、蓮如上人の『御文章』にもあります。<br/>
人のいのちは出る息と入る息の間にある、「朝（あした）には紅顔（こうがん）があっても夕（ゆうべ）には白骨となる」（1203頁）のであって、このようにこの世のいのちは無常であり、落とせば壊れる茶碗のように、いますぐにでも壊れるのです。<br/>
しかしそれだからこそ、そのいのちが壊れずに今あると思うと、とても愛（いと）しく、大切にせずにおれません。<br/>
この心がすべてのいのちに対しても同じであるのが仏であって、その心はすべてのいのちをわけへだてなく愛しむ大慈大悲にほかなりません。<br/>
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仏法を聞くのに明日という日はない、何はさておいても今聞くのだ―善従はそういう心得でもって教えを聞いていました。<br/>
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愛娘失った悲しみが<br/>
このように自分のいのちが無常であるということを知るなら、一瞬一瞬のいのちがいかに大切であるか、今なすべきことは何であるか、ということを真剣に考えるようになるのであって、仏法はそこから始まるといっても過言ではありません。<br/>
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<pclass="cap2">しゃぼん玉とんだ<br/>
屋根までとんだ<br/>
屋根までとんで<br/>
こわれて消えた<br/>

よくうたわれる「しゃぼん玉」のはじめの一節です。<br/>
作詞は野口雨情です。<br/>
音楽史家の長田暁二氏によりますと、いつどこにこれが発表されたか明らかでなかったが、最近になって、大日本仏教子ども会で発行していた児童雑誌「金の塔」に大正十一年に発表されていたことがわかりました。<br/>
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大正九年、雨情は作曲家の中山晋平、歌手の佐藤千夜子らと一緒に、自分たちの作った童謡の全国キャンペーンをしていました。<br/>
ちょうど四国徳島にいた時です。<br/>
故郷の茨城から二歳になったばかりの娘が疫痢（えきり）で急死したという悲しい知らせが届きました。<br/>
愛し子を失った悲しみ、あまりにもはかなく消えたわが子のいのちへの愛しみがこの童謡を生んだのです。<br/>
雨情は続いて第二節に、<br/>

<pclass="cap2">しゃぼん玉消えた<br/>
とばずに消えた<br/>
生まれてすぐに<br/>
こわれて消えた<br/>
風、風吹くな<br/>
しゃぼん玉とばそ<br/>

とうたっています。<br/>
雨情はこの短い一節のなかに「消えた」という語を三回も用いています。<br/>
これによっても幼ない愛し児を失った雨情の悲しみがどれほど深いものであったか、その心が痛いほど伝わってきます。<br/>
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「いのち」へのめざめ<br/>
しゃぼん玉は無常のいのちそのものです。<br/>
屋根までとんで消えるしゃぼん玉、それに比して生れてすぐとばずに消えてしまったしゃぼん玉―そのしゃぼん玉に愛児のいのちを重ね合わせ、そのどうしようもない悲しみから「風、風吹くな」と心から願わずにはおれなかったのです。<br/>
しかし、このように愛し児の死を悲しむ雨情でありましたが、この童謡からは、悲しみが「いのち」への深いめざめとなっているのを感じ取ることができます。<br/>
しゃぼん玉遊びに興じている児童の姿からは、このうたの心を窺（うかが）い知ることはできませんが、生と死の境に人間のいのちがあるという自明の理を痛感した作詞者の心を見過ごしてはならないと思います。<br/>
無常の現実にわが身が直面した時、私たちは一体どのようにそれを受け止めるでしょうか。<br/>
生死（しょうじ）の一大事の解決をめざして歩もうとするのか、それとも目を背けてそれから逃避しようとするのか、あるいは忘れ去ろうとするのか、そのうちのいずれかでなかろうかと思います。<br/>
仏教には「この世のすべては移り変わる。<br/>
怠ることなく努めよ」と遺言された釈尊の最後のことが伝えられています。<br/>
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諸行無常―<br/>

と釈尊はいって涅槃（ねはん）に入られたのです。<br/>
無常の理をしっかりと心に止め、悟りをめざして努めよと教えられているのであって、釈尊の教えはこのように、無常に始まり無常に終わっているということができます。<br/>
したがって「しゃぼん玉」のうたもその観点から理解しなければならないことは言うまでもありません。<br/>
少なくとも私はそのように考えています。<br/>
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