みな同じく斉（ひと）しくみんなの法話のソースを表示

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みな同じく斉（ひと）しく<br/>
本願寺新報2002（平成14）年3月20日号掲載<br/>
白川　義孝（しらかわ　よしたか）福岡・正善寺住職職<br/>
めぐり合いの喜び<br/>
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え．秋元　裕美子<br/>
戦後五十年...、体ひとつ...、夫婦二人で開いた植木屋をやめて、縁あってお念仏喜ぶ日暮らしを始めたSさんが、「明けましておめでとうございます」と、元気な声で年頭のご挨拶です。<br/>
そして「法語カレンダーの一月の言葉に『めぐり合うたよろこびこそ　生きたよろこびである』とありますが、あれは有り難いですね」と、いかにも嬉しそうにおっしゃるのです。<br/>
加えて「新年早々から枕元の柱に掛けて味わっています」と続けざまです。<br/>
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一番楽しいはずの青春時代が戦争のただ中にあり、幸せであるべき新婚時代が飢えと貧しさであったことを考えれば、Sさんの生涯は一体なんだったのだろうと思わずにはおれません。<br/>
そして、今年、米寿を迎えるというのです。<br/>
それでも、お話の折々に、「おかげで今日まで命がありました」と、感慨深げにおっしゃいます。<br/>
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「間に合ってよかったですね」と声をかけますと、<br/>

「はあ、よかった、よかった。<br/>
いいときに植木屋をやめました。<br/>
おかげでご法義に遇（あ）わせてもらいました。<br/>
阿弥陀さまが来て下さっている。<br/>
そんなこと知りませんでした。<br/>
これから長生きさせてもらいましょ」と、ひとりごとが続きます。<br/>
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縁側で繕（つくろ）い物をしていた86歳になる母が、そんな会話を聞いて、微笑（ほほえ）みながらうなずいているのです。<br/>
心温まる、和やかな新年のひと時です。<br/>
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小川のせせらぎ<br/>
車の窓越しの風景が春を感じさせる桃の節句の日のことです。<br/>
月参りの途中、ちょうど、<br/>

<pclass="cap2">春の小川は<br/>
さらさら行くよ<br/>
岸のすみれや<br/>
れんげの花に<br/>
すがたやさしく<br/>
色うつくしく<br/>
咲いているねと<br/>
ささやきながら<br/>
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春の小川は<br/>
さらさら行くよ<br/>
蝦（えび）やめだかや<br/>
小鮒（こぶな）の群に<br/>
今日も一日<br/>
ひなたでおよぎ<br/>
遊べ遊べと<br/>
ささやきながら<br/>

と口ずさみながら、ふと、幼い日、不思議に思ったことの一つが懐かしく心をよぎりました。<br/>
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それは、小川の水が、スミレやレンゲなど、岸に咲く花の一つひとつに、「やさしく、色うつくしく咲いているね」と、ささやきかけている情景です。<br/>
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ただサラサラと流れ続けている小川の水が、エビやメダカや小鮒の群に、「今日も一日ひなたで泳ぎ　遊べ遊べ...」と、ささやくということなど現実にはあり得ないことです。<br/>
もっとも、水と花とが心を通わせ、語り合う世界のあることを知らされたのは、ずいぶん時が経ってからのことです。<br/>
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しかし、ことはそれだけではありません。<br/>
小川の水は、スミレやレンゲの花が岸辺に咲き始めるはるか昔から流れていたのです。<br/>
エビやメダカや小鮒の群が住む前から、絶えることなく流れ続けているのです。<br/>
そんな遠い時の流れの中で、変わらぬ小川の水と、ひと時の「いのち」を恵まれて生きている生き物の「いのち」の営みとを二重写しにしてみますとき、巡り遇いのかけがえのなさに心を動かされます。<br/>
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そんな日常のあれこれを思いつつ、お念仏申す日暮らしを恵まれていることの不思議さを思わずにはいられません。<br/>
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いのちの故郷へ<br/>
幾たびかお手間かかりし　菊の花<br/>

とは、お念仏を喜んだ俳人・加賀の千代女の句です。<br/>
これを文豪・吉川英治さんは、結婚式の席で折々、祝辞に引用されたそうです。<br/>
ここでの「菊の花」とは、新郎・新婦のことでしょう。<br/>
見事に成長され、みんなからほめられるような一人前の大人になっていらっしゃるのです。<br/>
そして、「幾たびかお手間かかりし」です。<br/>
誕生以来今日まで、両親はじめ多くの方々の励まし、お力添え、お育てのおかげです。<br/>
「誠に...、誠に...」と、うなずくばかりです。<br/>
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ひるがえって今、私の身の上には、お念仏申す日暮らしが恵まれているのです。<br/>
そのことを思えば、どれほどのお手間がかかったことであろうかと感慨無量のものがあります。<br/>
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私一人の「いのち」に向かって喚（よ）びかけかけたもうみ仏さまのお救いの喚び声は、ご開山・親鸞聖人のお言葉通り、「みな同じく斉（ひと）しく選択（せんじゃく）の大宝海に帰して念仏成仏すべし」（註釈版聖典１８６頁）という、大慈悲のはたらきなのです。<br/>
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それは、国境を超えて拓（ひら）かれていくみ教えであり、お念仏申しつつ、人々と共に織りなす日暮らしが、み仏さまのまします「いのち」の故郷への歩みとして見事に彩られてゆく世界でもあるのです。<br/>
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