老い父の 味噌汁の好み 23

出典: Book


老い父の 味噌汁の好み 問う汝(なれ)よ わが妻となり 目覚めし明けに

母親を失って十年、父親と二人して豆腐屋を営む松下竜一氏が結婚しました。連れ添うは高校を卒業したばかりの、いわゆる幼な妻。

挙式後、初めて朝を迎えて幼い主婦の仕事始めは、先ずわが夫となった人のお父さんの味噌汁の好みを聞く事で始められます。

老い父の 味噌汁の好み 問う汝(なれ)よ わが妻となり 目覚めし明けに

これから大人になる本当に若い妻のけなげな覚悟のほどが察せられます。それは正しく愛ある覚悟、慈愛の決意です。

女手のない所帯に入り主婦となる。そこに女の言い分けを持ち込むのでもなく女の気持ちを主張するものでもありません。

先ず自分が接していく人の好みを尋ね聞く事から始められました。聞き取り承認し受容(うけい)れきってこばむことがない。これは慈悲・慈愛の姿を物語るものと申せましょう。

阿弥陀さまのお慈悲は、仏説無量寿経に説かれて完璧です。お慈悲のお仕上げについて、意(こころ)に先だちて承問す、と説かれます。生れ出て必ず死にゆく命に立対(たちむか)い、その立場事情の全てを察し、身の煩い心の悩みの一切を汲みとり尽くして、余すところない弥陀の大悲を先意承問と示されます。

そこに愚かさの非難はありません。侮り・蔑み・全くありません。生き方あさましく、罪は極まりなく深かろうとも、裁かず責めず阿弥陀さまは、汝罪深しとは一言一句告げられません。この世に命ある間、煩悩暮し、とめどない身を抱えとられます。やがてきっと終り、輪転きわまりない命を悲しみ抱いてくださる阿弥陀さま。ナンマンダ仏と来てくださいました。


藤岡 道夫