生き甲斐を 今更らしく 思ふらし 103

出典: Book


生き甲斐を 今更らしく 思ふらし 集える老ら しきり欠伸す  (杉山 長風)

集会所に老人向けの講演会が催される。 今日の演題は”生き甲斐について”。趣味を持って自ら楽しむ。また大袈裟なことでなくても、近隣の人の為になることをやって、自分から老け込むことを止めるよう努める。あるいは誰のためでもなく、自分で心を明るく持って、体についてはこんなこと、あんなことして、健康を保つなどなど、小気の利いた話が行われるのでしょう。

この歌の作者、杉山さんの眼に映るのは、頻りに欠伸をするお年寄り。”生き甲斐について”の演題も、今ここに、参加しているお年寄りの生き甲斐にならないらしい。今さら”生き甲斐”をと言われたとて、とこの歌の作者のみならず思われるのでしょうか。

お経に臨終の苦しみが説かれます。犯してきた罪の後悔の念(おも)い、そして死んで、その行方の見えぬ怯えとが、心の中に犇(ひし)めきあう。これぞ苦しみの極み、臨終・死の苦しみだ、と聞きます。心の持ちかた身ごなし程度で、埋めようもない命ごとなる苦があるぞと説かれます。

”まことの信心うる人は このたび さとりをひらくなり”と、親鸞さまが喜びを詠われます。よかったなあ。よろしゅうございました。人生の意味を正定聚と恵まれ、等覚・弥勒に匹敵のネウチもの。あまつさえ、大涅槃の証(さとり)に往きつく命です。よかったな、これはもう、お念仏申すばかりです。


藤岡 道夫