ビリの子は まだ懸命に 走りいて 121
出典: Book
ビリの子は まだ懸命に 走りいて
マイクは次ぎの プログラム告ぐ
朝日歌壇の下関・牛島正行さんの歌。運動会のカケッコ。これが学年最後の一とグループ。
一着がテープを胸にゴールするや次々になだれこむ。素早くマイクは場内一ぱい次のプログラムを告げました。
あろうことか、ビリの子はまだ懸命に走り続けているというのに。何たることを。 生きものの境界は激しい生存競争がある。英国の哲学者スペンサーのいう、環境に最も適したものが生き残るという適者生存の原理は、ダーウィンの”進化論”に用いられます。
しかし弱者が保護を受け、低劣な能力の命が見守られるのは、動物にもあります。ましてや人間社会、国や社会を挙げて、弱者へ弱者へと細やかな措置が行われます。
でもその順序はまず全体。次いで普通一般。次いで三番手四番手。そうしてからようやく極めて停滞している弱者のところへ及ぶ。
ビリの子は まだ懸命に 走りいて
マイクは次ぎの プログラム告ぐ
実際には弱者が切り捨てられ見放される情況があります。
弥陀のお慈悲は極限の弱者の命に立向うことから開始されます。平生仏縁を保って過ごすことなく、仏とも法とも覚えず知らずしてきて、今や臨終の床にある者。その情況、この命に忽ち通用する慈悲は如何に。ここのこの場に通用する慈悲のすがたと択(よ)り選(すぐ)り抜かれて、ナンマンダ仏が成りました。
弱者を救うではありません。これこそ大悲救済の本命、お目当てとこそ告げられます。
藤岡 道夫
